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なんでもQ&Aお答えします 1986年7月号

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月刊ボディビルディング1986年7月号
掲載日:2021.12.20

「夏バテ」防止の食事テクニック

Q  私は28歳の会社員です。別にこれといった運動は行なっていませんが、体格は人並みくらいです。
 実は、 ここ3~4年、ひどい「夏バテ」で悩んでいます。大学に行ってる頃は、「夏バテ」など全く感じなくて「夏バテ」の症状もよく知りませんでした。しかし、社会人になってからは毎年、年をおうごとに「夏バテ」がひどくなり、ほとんど食べる気がせず、水分とか、冷めたい食べ物で満腹といった状態です。その結果、ちょっと外を歩いただけで汗が止まらず、時々、立ちくらみがします。体重も3~5kgくらい減り、当然スタミナもめっきりなくなってきます。
 こんな状態ですので、スポーツでもして体力をつけようと思っても、なかなか思うように出来ません。
 そこで、間もなくやってくる夏に向けて、この夏バテを乗り切る食事法をアドバイスしてください。
 
(東京都 T.O. 28歳 会社員)
A  気温が30度以上、湿度が80%以上になると、体内の生理的機能に負担が急増してバテやすくなります。
 また、暑いために冷たいものを多食しやすくなりますが、 このため胃腸だけが部分的に冷たくなり、消化不良や下痢・食欲不振などを起こしやすくなります。しかも水分を多く摂りすぎると、逆に発汗が促進されすぎて悪循環になります。
 これを防ぐには、冷たい飲食物を最少限に減らし、バランスのとれた栄養摂取を心がけることが大切です。そしてたんぱく質が不足しないように充分摂り、ビタミン、 ミネラルも補給しましょう。そのためには、肉・魚・乳製品・大豆製品や野菜・果物を充分に摂る必要があります。
 なかでも、 ビタミンB1は、特に重要です。ビタミンB1を多く含む食品としては、豚肉、 レバー、ハム、たらこ、落花生、枝豆、セロリ、アスパラガスなどがあります。
 逆にコーラやソーダ水などは砂糖が主成分で、 これはビタミンB1を消耗するのでよくありません。(もちろん、他の砂糖を多く含む食品も同じこと)暑いからといって、 コーラやサイダーなどの清涼飲料水を飲みすぎるのはよくありません。
 食欲がない場合には、 レモンや梅干し、酢を使った料理などが効果的です。いろいろな食品にレモンをかけたり、酢の物を1品加えるようにすると、唾液の分泌も促進され、食欲増進にも効果的です。
 また、食事だけでなく、普段から卜レーニングを行ない、体を鍛えておくことも大切です。

胸・腕を中心にした初心者のトレーニング・スケジュールの作り方

Q  これからボディビルを始めようと思っている20歳の学生です。自宅にバーベルセット50kg、ダンベル2個、ベンチ台を購入したのはよいのですが、何からやってよいのかわからず、やはりキチッとしたスケジュールを立ててから、 トレーニングを始めたいと思っています。
 そこで、初心者向けのトレーニング・スケジュールを立てていただきたいのですが、なるべく胸と腕を中心にしたスケジュールをお願いします。これからやってみたい種目を書きならべましたのでご指導お願いします。
 
<採用したい種目>
①ダンベル・フライ
②ベンチ・プレス
③プルオーバー
④ベント・オーバー・ロー
⑤ダンベル・カール
⑥リバース・カール
⑦コンセントレイション・カール
⑧リスト・カール
⑨フレンチ・プレス
⑩ライイング・フレンチ・プレス
⑪ナロウ・グリップ・ベンチ
⑫サイド・レイズ
⑬スクワット

<体位>
身長175cm、体重70kg、胸囲90cm、上腕囲34cm、腹囲73㎝、大腿囲59cm、 カーフ37cm。

(神奈川県 匿名希望 20歳 学生)
A  あなたがお考えのように、 自己流ではなく、キチッとスケジュールを立ててトレーニングしようとすることはとてもよいことです。やはり基本が大切ですから。
 さて、あなたの体位を拝見すると、何かスポーツをなさっていたのか、よい体格をしているようです。次にトレーニング・スケジュールを作成しますが、一般の初心者のものよりも種目数なども多くしました。

<トレーニング・スケジュール例>
(隔日的、週3日)

①ベンチ・プレス 5セット
②ダンベル・フライ 3セット
 (③プルオーバー 3セット)
④ベント・オーバー・ローイング 5セット
⑤バック・プレス 4セット
 (⑥サイド・レイズ 3セット)
⑦ダンベル・カール 4セット
 (⑧コンセントレイション・カール 3セット)
 (⑨リバース・カール 3セット)
⑩ライイング・フレンチ・プレス 4セット
 (⑪ナロウ・グリップ・ベンチ・プレス 3セット)
 (⑫リスト・カール  3セット)
⑬スクワット 5セット
⑭シット・アップ 2セット

 最初はあまり多くの種目は欲張らず基本種目を忠実に行なって下さい。多く行いたい気持は分かりますが、最初の2~3ヵ月間は(  )の種目は行なわないようにして下さい。
 また、 (  )の種目をも全部行うようになると種目数がかなり多くなりますので、分割法を採用してもよいでしょう。まずは、 ABの2分割法で各々週2回ずつトレーニングするようにしてください。具体的には、次のような分割の仕方が一般的です。

◆Aコース(月曜・木曜) 
 胸・肩・上腕三頭筋
 
◆Bコース(火曜・金曜)
 背・上腕二頭筋・脚
 
 なお、プルオーバーは、胸と背の間に入れましたが、胸郭の拡張を促したいのであれば、 スクワットとスーパー・セットを組んで行なって下さい。この場合、クロス・ベンチ・ダンベル・プルオーバーが特に有効です。
 最後になりましたが、 トレーニングの前後には、 ウォーム・アップとクール・ダウンとして、ストレッチングを行なって下さい。

トレーニングの最初に腹筋の運動をしてもいいか?

Q  トレーニングを開始して2年になります。現在は自宅でトレーニングしています。今のところトレーニングは順調に進んでいますが、 自分なりに疑問に思っていることがあります。それは、 トレーニングの最初に腹筋のトレーニングを行うことの是非についてです。
 腹筋運動はエネルギー消耗の激しいトレーニングだと聞いているので、 これをトレーニングの最初にもっていった場合、疲労のため腹筋の後に行う種目に影響して、十分な練習ができないのではないかと思われるのです。それでも、一流ビルダーの中にはトレーニングの最初に必ず腹筋の運動を行う人もいると聞きます。
 そこで、 トレーニングの最初に腹筋の運動を行なっても良いのかどうかについて教えてください。なお、現在の私のスケジュールは次のようです。
 
◆現在のトレーニング・スケジュール
(隔日的、週3回)

①ベンチ・プレス
85kg 10回×5セット
②ダンベル・フライ
片方10kg 10回×3セット
③ベント・オーバー・ローイング
40kg 10回×5セット
④ ワン・ハンド・ローイング
片方10kg 10回×3セット
⑤バック・プレス
30kg 10回×3セット
⑥サイド・レイズ
片方5kg 10回×3セット
⑦フレンチ・プレス
10kg 10回×3セット
⑧ツー・ハンズ・カール
20kg 10回×3セット
⑨スクワット
100kg 10回×5セット
⑳ シット・アップ
50回×5セット

 なお現在の各部のサイズは身長178㎝、体重70kg、胸囲103㎝、上腕囲34㎝、大腿囲58cm、腹囲73㎝です。
 
(神奈川県 Y・K 20歳 学生)
A  まず結論から言いますと、 トレーニングの最初に腹筋運動を行なってもいっこうにさしつかえありません。ただし、 これはあくまでもウォーム・アップとしてであって、ハードなやり方はよくありません。
 筋肉優先法(他の部位に比較して発達の遅れている部位をトレーニングの最初に行う方法)として、腹筋を最も重点的に鍛えたいという意図があるのなら別ですが・・・・・・。
 一般的には、他の部位の筋肉の方をより発達させたいので、その部分からトレーニングを行います。(補助筋などとの関連もあり、普通、胸や背などから行います)
 また、腹筋を最も鍛えたい場合でも腹筋は他の筋肉のように、それほどバルク・アップが必要というわけでもないので、 この部位のトレーニングにはさほどのエネルギーや精神の集中も必要ないでしょう。(ただし、気を抜いて行なってよいということではなく、あくまでも他の部位の筋肉と比べての話です)
 腹筋を最初にトレーニングするメリットとしては、前述のようにウォームアップの効果があるということです。特に寒い冬などには有効です。
 従って、 トレーニングの最初に腹筋運動を行なってもかまいませんが、あくまでもウォーム・アップと考え、もし腹筋を充分に鍛えたいのなら、他の身体部位のトレーニングをひと通り済ませたあとで、オールアウトするまで腹筋のトレーニングを行なってください。この場合、腹筋のあとはもうトレーニングはないのですから、 ここでエネルギーを使い切ってしまってもいいわけです。
 ちなみに、一流ビルダーで最初に腹筋のトレーニングを行い、それだけで腹筋の運動を終らせている場合は、オフ・シーズンのために腹筋のカット・アップが必要ないからです。シーズンに入り、 カット・アップが必要な場合には、ほとんどのコンテスト・ビルダーは、やはり トレーニングの最後に腹筋のトレーニングを目一杯実施しています。
 あなたの場合は現在、 トレーニングの最後にシット・アップを5セット行なっていますが、 もしトレーニングの最初にも行いたいのであれば、 レッグ・レイズを最初に2~3セット行い、トレーニングの最後にシット・アップを2~3セット実施するのがよいと思います。

コンテストを前にして筋肉の張りがなくなってしまったが

Q  トレーニングを始めて2年になります。初めてのコンテスト出場に向けて、 3ヵ月ほど前からトレーニング量を大幅に増やして行なっていました。食事のほうもある程度制限したせいか、徐々に脂肪が落ちてきて順調だったのですが、最近になって、どうしても脂肪が落ちなくなり、逆に筋肉の張りがなくなってきました。
 そのため、食事内容をもとに戻して回復させようとしたところ、ようやく少しずつ筋肉に張りがでてきました。減量時の食事内容は炭水化物、脂肪だけでなく全体的に摂取量を減らしたつもりです。
 そこで、筋肉が張りを失った原因、このようにならないための対策、 もしコンテスト直前に筋肉の張りがなくなったらどのような処置をすれば良いのかについて具体的にアドバイスをお願いします。
 
(大阪府 H・I 20歳 学生)
A  トレーニング量を大幅に増やしたことにより、消費カロリーも大幅に増え、食事の方も制限したことにより摂取カロリーは減り、 このため、それまでバランスがとれていた(あるいは摂取カロリーの方がいくぶん多かった)ものが、消費カロリーが摂取カロリーを大きく上まわったために、必要以上に減量しすぎ、筋肉まで張りが失われたものと思われます。具体的にどこまで食べても平気か、つまり、その食べた分はトレーニングなどのエネルギーとして使われ、しかも皮下脂肪も落とす、ということは非常に難しいことです。
 あなたのようにならないようにするには、炭水化物をうまく摂ることがポイントとなります。その人のトレーニング量や日常生活で使うエネルギーによって異なってきますが、朝食・昼食には例えばごはんなら軽く1杯ずつ食べてもかまいません。この方がトレーニングがスムーズにでき、かえって減量もはかどります。ある程度長期間に渡って減量する場合には夕食にも少量摂ってかまいません。
 本誌に連載中の一流選手の食事法を参考にして、たんぱく質過剰にならないよう、また炭水化物不足にならないよう、バランスのとれた食事法を心掛けて下さい。
 コンテストの直前に筋肉の張りがなくなって来た場合には、それまでのダイエット法を改め、炭水化物の摂取を増やして下さい。特にトレーニングの前には、ある程度充分摂っておくことが必要です。逆にトレーニング後の食事では炭水化物をも含め、 カロリーを摂りすぎないように注意して下さい。

背中の広がりと厚みを増すトレーニング種目

Q  ボディビル歴は1年です。現在はあるトレーニング施設で練習しています。
 効果も少しずつあらわれてきましたが、私の希望は、いわゆる逆三角形の体形です。そこで質問したいのは、背中の広がり、及び厚みを増すためにはどんなトレーニングをしたらよいのでしょうか。背中の発達には、広がりと厚みと、下部の発達があり、下部はなかなか発達しないと聞いています。
 現在、背中のための運動としては下記の3種目を実施していますが、背中の広がりに有効な種目、厚みを増すのに有効な種目をもっとよく理解したうえでトレーニングしたいと思っています。そこで、背中のトレーニングの中で、 どの種目にはどういう効果があるのか教えてください。
 
<現在の背中の種目>

①チンニング
3セット
②ベント・オーバー・ローイング
20~30kg 3セット
③ワン・ハンド・ローイング
10kg 3セット

<体位>
身長170cm、体重69kg、胸囲100cm、腹囲72cm

(東京都 M・O 26歳 会社員)
A  背中の筋肉(ここでは、特に広背筋)は非常に大きい筋肉であり、そのトレーニング種目にも多くのものがあります。完全な背中の発達を目指すのであれば、ただ漠然と背中のトレーニング種目を行うのではなく、それぞれの種目は広背筋のどの部分に、 どのように有効なのかをよく知って、また、そこを意識してトレーニングすることが大切です。
 それぞれの種目の説明に入る前に、広背筋のトレーニングにおけるポイントを述べます。このポイントをマスターすれば、以下に説明する種目以外でも、特に説明がなくても、ご自分で理解できるでしょう。
 まず、体に対しての肘を引く角度については、体の上方から下方へ向って肘を充分張りながら行うと広がりに有効です。また、肩甲骨を広げて伸ばした状態から動作を開始することが大切です(各レップスで)。チン・ビハインド・ネックなどがこの例です。
 逆に厚みを増すためには、体の前方から後方へつまり胴体に対して肘を引く方向が直角になるようにします。そして充分肘を後方へ引きつけることが大切です。この際、背中を反らせ胸を充分張るようにします。例えば、ベント・オーバー・ローイングなどで、充分にバーを腹部まで引き上げるように行う方法が、これに当ります。
 その他のポイントについては、それぞれの種目のところで随時説明していきます。

◎主として広がりに効果的な種目

①チンニング
 特に広がりに効かせるには、 ワイド・グリップでビハインド・ネックで行うとよい。各レップスごとに肩甲骨を充分に伸ばし(肘ではない)、体を引き上げる前に肩甲骨を左右横に拡げてやるようにするとよい。肘は体側よりも前にいかないように充分張ること。

②ラットマシン・プルダウン・ビハインド・ネック
 ポイントはチン・ビハインド・ネックに同じ。

③ベント・オーバー・ローイング
 ベンチなどの上に乗って行う。上に引いた時点よりも、バーを下に降ろして、肩甲骨が伸びた時点を重視して行う。つまりベンチに乗って行えば充分バーを降ろせるので、その分肩甲骨を伸ばすことができる。この場合、背中を反ってはいけない。背中を湾曲させて行う。(この運動は腰を痛めやすいので注意を要する)

◎主として厚みに効果的な種目

①ベント・オーバー・ローイング
 前述のやり方とは当然異なり、引き上げた時点を重視する。グリップは肩幅ぐらいで、充分胸を張り、腰を反らせ、肘を高い位置まで引きつける。バーを腹部につくまで上げるとよい。

②エンド・オブ・バー・ローイング
 レバレッジ・バー(シャフトの片方にプレートをとりつけ、他の端を床に固定したもの)または、バーベルをそのような形状に組んだものを上体を前倒した姿勢でまたぎ、プレートのついている方のバーの端を下から両手で握って腹のあたりへ引きあげる。ポイントとしては、やはり胸を張り、肘を充分に引きつけることが大切です。
〔回答はトレーニング・プラザ代々木・野沢秀雄先生、工藤悦弘先生〕
月刊ボディビルディング1986年7月号

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