1986年度第3回ジャパンボディビルディングチャンピオンシップス
金城(バンタム級)、朝生(ライト級)、小沼(ミドル級)、石井(Lヘビー級)、大垣(ミスの部)が優勝
北村(Lヘビー級1位)、石村(ライト級2位)、宮畑(ミドル級3位)、臼井(Ⅼヘビー級3位)、北沢(ミスの部2位)、薬物使用で失格
今大会の見どころは、今年10月、東京で開かれるミスター・ユニバースの日本代表に誰が選ばれるかということと、コンテスト史上、初めて実施されるドーピング・チェックにあった。
その結果、誠に残念ながら北村克己、石村勝巳、宮畑豊、臼井オサム、北沢磨佐美の5選手が薬物を使用していたことが判明し、失格となったのである。
なお、この薬物検査は大会終了直後、各クラスの上位3名を対象として行われたもので、結果が判明したのは3日後のことである。
かねてから欧米のトップビルダーたちが薬物を使用していることは、半ば公然の秘密のごとく流布されていたが、まさか、これほどまでに日本のビルダーが汚染されているとは思わなかった。
この厳然たる事実は、過去30年間にわたって、多くの先輩たちが幾多の誹誇や誤解と戦いながら、営々として築いてきた日本のボディビル界を一瞬にして覆しかねない一大不祥事と言っても過言ではなかろう。
逞しい健康美と強い体力を標榜するボディビルが、たとえ一部の選手とはいえ、薬物に頼っていたことが明白となり、まことに痛恨のきわみである。
日本ボディビル連盟としても、これらの選手の処分問題を含め、今後の対応策が緊急課題となろう。(今回のドーピング・チェックについては、本文のJBBFドーピング・コントロール委員会・後藤紀久委員長の経過報告を参照されたい)
さて今大会は各クラスに傑出した選手が2人ずつおり、近来、まれに見る熱戦がくりひろげられた。すなわち、バンタム級では金城、川上、ライト級では石村、朝生、ミドル級では榎本、小沼、ライトヘビー級では北村、石井、ミスの部では北沢、大垣という対決であった。
これらの模様については各クラス別の項を見ていただくとして、最後にゲストのボブ・パリスについて一言ふれておきたい。
これまでに20人を越す外国の有名ビルダーがゲストとして来日したがほとんどの選手が体調不充分で、日本のボティビル・ファンの期待を裏切ってきた。その中でも、今回のボブ・パリスは最低だった。
どこがいいとか、悪いとか言う以前の問題である。かりにボブ・パリスが、このジャパン・チャンピオンシップスのどのクラスに出場したとしても、3位以内に入ることは不可能だったと思う。名声だけで、当日の出場選手よりも、はるかにレベルの低いゲストでは、期待した観客をガッカリさせるだけで、高い旅費とギャラを払った意味がない。
過去最高に盛りあがった今年のジャパン・チャンピオンシップスだったが、このボブ・パリスによって、最後に冷水を頭からぶっかけられた思いがした。
※ドーピング・チェックは表彰式のあとで行われたので、ここに掲げた写真は失格者も当初発表された順序で入っている。
▲バンタム級表彰式。左から2位・川上、1位・金城、3位・島袋
▲ライト級表彰式。左から失格・石村、1位・朝生、2位・岡本
▲ミドル級表彰式。左から2位・榎本、1位・小沼、失格・宮畑
▲ライトヘビー級表彰式。左から1位・石井、失格・北村、失格・臼井
▲ミスの部。左から失格・北沢、1位・大垣、2位・須藤
ゲストのボブ・ハリス
(表の見方)予選、決勝の各ラウンド共、各審査員が1位と思う選手に1点、2位と思う選手に2点というように採点する。そして、その選手に与えられた得点のうち、最高点と最低点をカットした合計点数により順位を決定する。なお、バンタム級の4、5位は同点だったが、伊藤由大選手を上位と採点した審査員が延べ10人、荒川選手を上位と採点した審査員が延べ6人だったため、伊藤選手を上位とする。
バンタム級
この2人は、過去2回とも、ほとんど今回と同じような体調で出場しており、順位も全く同じ。川上が金城を抜くには、現在のデフィニッションを維持しながら、1にも2にもバルクをつけることが課題であろう。
3位には初出場ながら沖縄の島袋がよく健闘し、伊藤由大、荒川敏夫(旧姓・関口)、伊藤長吉らのベテランを破って入賞した。
優勝・金城正秀選手
2位・川上昭雄選手
3位・島袋正和選手
4位・伊藤由大選手
5位・荒川敏夫選手
6位・伊藤長吉選手
ライト級
朝生は体形、バルクとも抜群の素質を持ちながら、仕事の関係で、ここ数年、完調で大会に臨んだことがなかったが、今回は見事に減量とカットアップに成功し、すべての面で石村を上まわっていた。石村は薬物使用で失格。
2位には、いつもながら深いカットの入った背と迫力ある上半身、それに闘志あふれるポージングを見せた岡本、3位には東北の雄、中村が入った。
また、10数年ぶりでカムバックした今年49才の元ミスター日本・金沢は1年間のハードトレーニングで上半身はかなり良くなっていたが、脚のバルク、カットがともなわず、4位にとどまった。
優勝・朝生照雄選手
2位・岡本正信選手
3位・中村勝美選手
4位・金澤利翼選手
5位・後藤裕巳
失格・石村勝巳選手
ミドル級
背と太腿と肌の色では小沼、腹と前腕と下腿では榎本、胸と上腕は互角と見たが、ポージングに入るとカットの深さが鮮明に浮き出た小沼が大きくリードした。
それに小沼の凄いファイトに対し、榎本には何となく余裕が感じられたのがマイナスに作用したのではないだろうか。3位にはベテラン宮本、4位には大河原が入った。
優勝・小沼敏雄選手
2位・榎本正司選手
3位・宮本萬造選手
4位・大河原久典選手
5位・押方兼二選手
失格・宮畑豊選手
ライトヘビー級
しかし、彼はドーピング・チェックで失格。あの迫力が薬物使用による虚構だったとは......。
2年ぶりにカムバックの石井は、ウエストも引き締まり、上半身はかなり良くなっていたが、脚にカットがなかった。北村と臼井が失格したため高西が2位、大谷が3位に繰り上がった。
高西は、素質的には非常に良いものを持っていながら、最後のツメが甘いのか、いつも中途半端な状態で出場しているような気がしてならない。
優勝・石井直方選手
2位・高西文利選手
3位・大谷浩司選手
失格・北村克己選手
失格・臼井オサム選手
ミスの部
大垣は少ししぼり過ぎという感じで、欲を言えばもう少しバルクが欲しいが、腹や背、脚にきれいなカットもあり、よく焼き込んだ肌と落ち着いたポージングで文句なしの優勝。
2位の須藤は、相変らず美しいプロポーションと華麗なポージングを見せていたが、その反面、迫力的に少し物足りない。大垣を抜くには、もう少しカット・アップする必要があろう。3位の大島はカットはまあまあであるが、バルク不足である。
優勝・大垣順子選手
2位・須藤ゆき選手
3位・大島ひろみ選手
4位・中村泰子選手
5位・大森好子選手
失格・北沢磨佐美選手
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