新ボディビル講座
ボディビルディングの理論と実際 <38>
Ⅳ.前腕のトレーニング<その2、伸筋>
1.バーベルによるリスト・カール
これら伸筋群の代表的な筋としては、浅層側(浅指伸筋と呼ぶ)に腕橈骨筋、長撓側手根伸筋、短橈側手根伸筋、総指伸筋、尺側手根伸筋があり、深層側(深指伸筋と呼ぶ)には、回外筋、長母指外転筋、短母指伸筋などがある。
前腕の伸筋群は、前号の屈筋群と同様、筋量や血流量の問題からハイ・レペティション・トレーニングがよいが、日常生活やふだんの他の部位のトレーニングで負荷がかかり難い筋群であるため、前腕の屈筋群よりパンプ・アップしやすい。
この伸筋群の特色は、腕橈骨筋のバルク的役割と、長撓側手根伸筋のディフィニッション的役割にある。前腕の背面側のポージングにおいては、手首を背面側に屈曲(手首関節の背屈位)した状態において明瞭にわかるので、地味でかくされた存在の筋肉であるが、とくに上級者は忘れずにトレーニングしておこう。
≪1≫スタンディング・バーベル・パームズ・ダウン・リスト・カール
(通称:スタンディング・リバース・リスト・カール、初心者)[図・1]
<かまえ>オーバー・グリップで両手でバーベルを持ち、手首を伸ばしてかまえる。
<動作>手首を背面側に曲げて、元に戻す。
<注意点>前腕背面の伸筋群に意識集中し、手の甲を前腕背面につけるような気持で、強く手首を曲げ込む。トレーニングとしてはやさしいので、初心者からでも行なうことができる。
<作用筋>前腕伸筋群。
[図・1]スタンディング・リバース・リスト・カール
(通称:シーテッド・リバース・リスト・カール、初心者)[図・2]
<かまえ>フラット・ベンチか椅子に腰かけ、オーバー・グリップで両手でバーベルを持ち、手首を手掌側に垂らしてかまえる。
<動作>手首を起こしつつ、背面側に曲げて、元に戻す。
<注意点>腰かけてリスト・カールを行なうことにより、姿勢が安定するので、屈筋群、伸筋群ともに正確に動作をすることができる。また、シーテッド・スタイルからチーティングに移行する場合、動作初期にカーフの力を借りて爪先立つことにより、バーベルに加速をつけてやることができる。
<作用筋>前腕伸筋群。
[図・2]シーテッド・リバース・リスト・カール
(通称:スクワット・リバース・リスト・カール、中級者)[図・3]
<かまえ>腰を中腰に下ろし、両手でオーバー・グリップでバーベルを持ち、大腿部上に前腕をのせてかまえる。
<動作>前項同様。
<注意点>前腕屈筋のリスト・カールの時と同様、シーテッドの時と比べて腰が不安定になるので、適当なベンチや椅子がない場合のみ採用すること。また、腰かけていないため、チーティングへの移行もむずかしい。
<作用筋>前腕伸筋群。
[図・3]スクワット・リバース・リスト・カール
(通称:ベンチ・リバース・リスト・カール、初心者)[図・4]
<かまえ>オーバー・グリップで両手でバーベルを持ち、腰を下ろして適当な高さのベンチに前腕をのせ、手掌側に手首を曲げてかまえる。
<動作>手首を背面側にそらし曲げ、元に戻す。
<注意点>姿勢が安定することにより、リスト・カールにおける前腕の安定性と正確性が保たれるので、初心者でも採用できる。
<作用筋>前腕伸筋群。
[図・4]ベンチ・リバース・リスト・カール
(通称:ハイ・フラット・リバース・リスト・カール、中級者)[図・5]
<かまえ>ハイ・フラット・ベンチに伏臥し、オーバー・グリップで両手でバーベルを持ち、手首を伸ばしてかまえる。
<動作>手首を背面側に曲げて、ゆっくり戻す。
<注意点>立位および伏臥で運動することは、前腕の筋肉が最大に短縮した時に最も抵抗が強くなる。この特色を考慮して採用するとよい。また、リスト・カールするとき、前腕が水平方向の場合と、この運動のように前腕が垂直方向になっている場合とでは、フィニッシュにおける抵抗負荷がいくぶん違ってくる。
<作用筋>前腕伸筋群。
[図・5]ハイ・フラット・リバース・リスト・カール
2.ダンベルによるリスト・カール
(通称:スタンディング・ツー・ダンベル・リバース・リスト・カール)[図・6]
<かまえ>両手にアンダー・グリップでダンベルを持ち、大腿部の前にかまえる。
<動作>手首を背面側に曲げて、ゆっくり戻す。
<注意点>バーベルによる動作と同様であるが、ダンベルによる特色は、かまえの位置を、大腿部前にかまえるのみでなく、横に開いても行なうことができる。
<作用筋>前腕伸筋群。
[図・6]スタンディング・ツー・ダンベル・リバース・リスト・カール
(通称:ベンチ・ツー・ダンベル・リバース・リスト・カール、中級者)[図・7]
<かまえ>両手でオーバー・グリップでダンベルを持ち、腰を下ろして、適当な高さのベンチに前腕をのせ、手掌側に手首を曲げてかまえる。
<動作>手首を背面側に曲げて、ゆっくり元に戻す。
<注意点>前項と同様、バーベルによる動作と同じであるが、前腕の回内・回外運動ができるので、橈側側の伸筋群(腕橈骨筋、橈側手根伸筋)、尺側側の伸筋群(尺側手根伸筋)にポイントをおいたトレーニングをすることができる。
<作用筋>前腕伸筋群(回内方向・・・橈側伸筋群、回外方向・・・尺側伸筋群)
[図・7]ベンチ・ツー・ダンベル・リバース・リスト・カール
(通称:ハイ・フラット・ダンベル・リバース・リスト・カール、中級者)[図・8]
<かまえ>ハイ・フラット・ベンチに伏臥し、オーバー・グリップで両手にダンベルを持ち、手首を伸ばしてかまえる。
<動作>前項同様。
<注意点>バーベルの時と同じく、最大屈曲位(最大収縮時)において最大負荷がかかるが、前項と同様、前腕の回内・回外による筋肉刺激方向を変えるとよい。
<作用筋>前項同様。
[図・8]ハイ・フラット・ダンベル・リバース・リスト・カール
(通称:ワン・ダンベル・ベンチ・リバース・リスト・カール、初心者)[図・9]
<かまえ>1個のダンベルの両端を両手でオーバー・グリップで持ち、ベンチの上に前腕をのせてかまえる。
<動作>手首を背面側に曲げ、元に戻す。
<注意点>屈筋群の運動の時と同様、ベンチを利用して行なうリストの運動は、重量物を扱いやすいワン・ダンベルからトレーニングに入ると比較的正確に動作がおぼえられるので、初心者はこの方法から始めるとよい。
<作用筋>前腕伸筋群。
[図・9]ワン・ダンベル・ベンチ・リバース・リスト・カール
3.プーリーによるリスト・カール
(通称:ロー・プーリー・リバース・リスト・カール、中級者)[図・10]
<かまえ>ロー・プーリーのワイヤーにショート・バーをつけ、これをオーバー・グリップで持ち、腕を伸ばしてかまえる。
<動作>手首を背面側に曲げて、元に戻す。
<注意点>このリスト・カールは、チェスト・ウェイトのハンドルでもよいが、左右のコントロールが悪くなるので、ショート・バーからトレーニングするとよい。ただし、ハンドルの場合は、前腕の回内・回外運動を取り入れられる利点がある。
<作用筋>前腕伸筋群。
[図・10]ロー・プーリー・リバース・リスト・カール
Ⅴ.前腕のトレーニング<その3>
<かまえ>オーバー・グリップでリスト・ローラーのバーを持ち、ローラーのひも(ロープ)を垂らしてかまえる。
<動作>屈筋群を目的とする場合は掌側側に巻き込み、伸筋群を目的とする場合は背側側に巻き込む。そして、いずれの場合も、ロープをいっぱいに巻き込んだら、握力を弱めて、ゆっくり重りを下ろす。
<注意点>リスト・ローラーは専門的な用具もあるが、手製の器具で充分である。水道工事店等で塩化ビニール・パイプを購入し、適当な長さに切断したら、直径1cm程度の鉄棒を火であぶってパイプに穴をあける。その穴に丈夫なロープを通し、ロープの下端に適当な重さのプレートを結びつける。ロープの長さとプレートの重さで負荷のコントロールがつけられるので便利である。ロープが長い場合は、踏み台の上やフラット・ベンチの上に乗って行なうとよい。
<作用筋>前腕屈筋群、前腕伸筋群。
[図・11]リスト・ローラー・エクササイズ
(中級者)[図・12]
<かまえ>ダンベルの片方のプレートを抜いた方のバーの端を片手で持ち、手首を小指側(尺側)に曲げ、プレートを垂らしてかまえる。
<動作>小指側に曲げた手首を親指側(橈側)に曲げる。
<注意点>上腕骨より起こる腕橈骨筋と長橈側手根伸筋の運動であるから、手首を橈側に曲げると共に、肘関節が多少曲がった方が、筋の短縮率が強まる。また、フィニッシュでプレート側を挙げ過ぎると、かえって筋への抵抗負荷がなくなるので、上まで挙げ過ぎないこと。
<作用筋>腕橈骨筋、長橈側手根伸筋。
[図・12]スタンディング・ワン・ダンベル・リスト・アップ
(通称:プレート・スクウィーズ、中級者)[図・13]
<かまえ>両手にバーベルのプレートの角を持ち、腕を体側に伸ばしてかまえる。
<動作>親指以外の指4本でプレートの角を握り込むようにつり上げ、指を伸ばすようにして下ろす。
<注意点>前腕屈筋群を中心とする握力のトレーニングである。とくに第2指(人差指)から第5指(小指)までの屈曲運動が中心となる。
<作用筋>前腕屈筋群。
[図・13]プレート・スクウィーズ
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