カルシウム・パラドックス
掲載日:2020.07.09
前述の通り、カルシウム摂取が足りないと、パラソルモンが分泌されて骨からカルシウムが溶出します。このとき、不足分を補うだけカルシウムを溶出するのならまだ良いのですが、そう上手くはいきません。
保険のため、必要量よりも余計にカルシウムが溶出されてしまうのです。すると余ったカルシウムが血管に沈着し、動脈が石灰化して動脈硬化を引き起こします。
高齢者は肩や腰、膝などにカルシウムが沈着し、動脈が石灰化して動脈硬化を引き起こします。高齢者は肩や腰、膝などにカルシウムが沈着して「石灰化」し、痛みを引き起こすことがよくありますが、これを防ぐためには、若いころから常にカルシウムが不足しないように気を付けておくことが必要です。しかし、多く摂れば良いというものでもありません。
なおカルシウムの摂取によって心臓血管系疾患のリスクが高くなるという報告もあります。(※17,※18)。このようにカルシウムについては逆説的な現象がいくつかあるため、これらを「カルシウム・パラドックス」と呼んでいます。
保険のため、必要量よりも余計にカルシウムが溶出されてしまうのです。すると余ったカルシウムが血管に沈着し、動脈が石灰化して動脈硬化を引き起こします。
高齢者は肩や腰、膝などにカルシウムが沈着し、動脈が石灰化して動脈硬化を引き起こします。高齢者は肩や腰、膝などにカルシウムが沈着して「石灰化」し、痛みを引き起こすことがよくありますが、これを防ぐためには、若いころから常にカルシウムが不足しないように気を付けておくことが必要です。しかし、多く摂れば良いというものでもありません。
なおカルシウムの摂取によって心臓血管系疾患のリスクが高くなるという報告もあります。(※17,※18)。このようにカルシウムについては逆説的な現象がいくつかあるため、これらを「カルシウム・パラドックス」と呼んでいます。
NCXとカルシウムポンプ
細胞にはナトリウムイオンとカリウムイオンが行き来する「ナトリウムポンプ」だけでなく、ナトリウムイオンとカルシウムイオンが行き来する経路もあり、これをナトリウム/カルシウム交換チャネル(Na/Ca交換系:NCX)と呼びます。
これはナトリウムイオンを細胞内に入れ、カルシウムイオンを細胞外に排出する機構です。しかし細胞内のナトリウムイオンが多いときは、逆にカルシウムイオンを細胞内に入れ、ナトリウムイオンを細胞外に出すように働きます。
なお基本的に「ポンプ」というのはATPを使って濃度勾配に逆らうもので、「チャネル」というのはATPを必要とせず、濃度勾配に従って物質が移動するものとなります。
ナトリウムポンプについては既に紹介しましたが、カルシウムポンプというものもあります。
筋肉が収縮するときは筋小胞体からカルシウムイオンが放出されると前述しましたが、筋小胞体にはもともとカルシウムイオンが大量に存在するため、放出は「カルシウムチャネル」を通じて起こります。
放出されたカルシウムイオンが筋小胞体に戻るときには、「カルシウムポンプ」を通じて戻るということになります。これはATPが必要であり、このときにマグネシウムが必要となります。
まとめると、筋肉が収縮するときは筋小胞体からカルシウムイオンが放出され、細胞内のカルシウムイオン濃度が高くなります。これを元に戻す経路が二つあり、一つは筋小胞体にあるカルシウムポンプによって筋小胞体に戻る経路、
もう一つはナトリウム/カルシウム交換系によって細胞外に出ていく経路だということです。
なおMarksらによれば、加齢による筋力減少は筋小胞体からのカルシウムイオン放出減少が原因だとしています。前述のとおり筋小胞体からは「リアノジン受容体(カルシウム放出チャネル)」を介してカルシウムイオンが放出されます。
これを安定化させているのが「カルスタビン1」というタンパク質ですが、活性酸素によってカルスタビン1がダメになってしまうとリアノジン受容体の働きが悪くなり、カルシウムイオンが普段からダダ漏れになってしまうのです。するといざというときに十分なカルシウムイオンを放出できなくなるというわけです。(※19,※20)
実際にカタラーゼ(抗酸化酵素)をミトコンドリアに発現させたところ、カルシウムの漏出が減少して筋力が改善しています。(※21)活性酸素を除去するスカベンジャーを摂取することで、加齢による筋力低下を防ぐことができるかもしれません。これについて詳しくは拙著「活性酸素とスカベンジャー」をご一読されることをお勧めします。
これはナトリウムイオンを細胞内に入れ、カルシウムイオンを細胞外に排出する機構です。しかし細胞内のナトリウムイオンが多いときは、逆にカルシウムイオンを細胞内に入れ、ナトリウムイオンを細胞外に出すように働きます。
なお基本的に「ポンプ」というのはATPを使って濃度勾配に逆らうもので、「チャネル」というのはATPを必要とせず、濃度勾配に従って物質が移動するものとなります。
ナトリウムポンプについては既に紹介しましたが、カルシウムポンプというものもあります。
筋肉が収縮するときは筋小胞体からカルシウムイオンが放出されると前述しましたが、筋小胞体にはもともとカルシウムイオンが大量に存在するため、放出は「カルシウムチャネル」を通じて起こります。
放出されたカルシウムイオンが筋小胞体に戻るときには、「カルシウムポンプ」を通じて戻るということになります。これはATPが必要であり、このときにマグネシウムが必要となります。
まとめると、筋肉が収縮するときは筋小胞体からカルシウムイオンが放出され、細胞内のカルシウムイオン濃度が高くなります。これを元に戻す経路が二つあり、一つは筋小胞体にあるカルシウムポンプによって筋小胞体に戻る経路、
もう一つはナトリウム/カルシウム交換系によって細胞外に出ていく経路だということです。
なおMarksらによれば、加齢による筋力減少は筋小胞体からのカルシウムイオン放出減少が原因だとしています。前述のとおり筋小胞体からは「リアノジン受容体(カルシウム放出チャネル)」を介してカルシウムイオンが放出されます。
これを安定化させているのが「カルスタビン1」というタンパク質ですが、活性酸素によってカルスタビン1がダメになってしまうとリアノジン受容体の働きが悪くなり、カルシウムイオンが普段からダダ漏れになってしまうのです。するといざというときに十分なカルシウムイオンを放出できなくなるというわけです。(※19,※20)
実際にカタラーゼ(抗酸化酵素)をミトコンドリアに発現させたところ、カルシウムの漏出が減少して筋力が改善しています。(※21)活性酸素を除去するスカベンジャーを摂取することで、加齢による筋力低下を防ぐことができるかもしれません。これについて詳しくは拙著「活性酸素とスカベンジャー」をご一読されることをお勧めします。
※19: Ryanodine receptor oxidation causes intracellular calcium leak and muscle weakness in aging. Cell Metab. 2011 Aug 3; 14( 2): 196-207. doi: 10. 1016/ j. cmet. 2011. 05. 014.
※20:Remodeling of ryanodine receptor complex causes "leaky" channels: a molecular mechanism for decreased exercise capacity.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2008 Feb 12; 105( 6): 2198-202. doi: 10. 1073/ pnas. 0711074105. Epub 2008 Feb 11.
※20:Remodeling of ryanodine receptor complex causes "leaky" channels: a molecular mechanism for decreased exercise capacity.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2008 Feb 12; 105( 6): 2198-202. doi: 10. 1073/ pnas. 0711074105. Epub 2008 Feb 11.
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