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亜鉛とその作用

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掲載日:2020.09.03
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亜鉛は体内に2000mgほど存在し、300種類以上の酵素の補因子となったり、ホルモンの材料となったり、DNAやタンパク質の合成に必要とされたり、免疫反応を調節したりします。

食物から亜鉛を摂取するとアミノ酸や有機酸、リン酸などと複合体を形成して小腸から吸収され、血中タンパク(アルブミン)と結合して門脈から肝臓に運ばれます。では、亜鉛の作用について解説していきましょう。

重要なホルモンの材料になる

亜鉛はテストステロンや成長ホルモン、そして特にインスリンをつくるために必要となります。インスリンはα鎖とβ鎖の二つのペプチドから作られていますが、亜鉛はこの二つのペプチドをつなげて安定させるときに必要になるのです。亜鉛の投与によってIGF-1が増加したという報告(※36,※37)や、インスリン抵抗性を改善したという報告(※38,※39)もあり、これらのホルモンの働きを高めたい場合、亜鉛摂取が不足している人には特に効果が期待できます。

正常な細胞分裂に必要となる

DNAと結合する転写因子は、その多くが「ジンクフィンガー」と呼ばれるタンパク分子ドメインを持っており、これを安定化させるのにも亜鉛が必要となります。つまり亜鉛が不足しているとDNAが正常にコピーされず、細胞分裂がうまくいかなくなるのです。

SODの材料となる

体内における活性酸素の障害については、スーパーオキサイドに由来するものが大半となります。これを消去する生体内スカベンジャーとしては、「SOD(スーパーオキサイド・ディスムターゼ)」と「セルロプラスミン」の二つが代表格です。SODについて言えば真核生物の場合、銅亜鉛型とマンガン型のものがあり、スーパーオキサイドを過酸化水素と酸素に分解します。銅亜鉛SODはサブユニット2個からなるダイマー構造を形成しており、1個のサブユニットにつき1つずつの銅と亜鉛が存在します。
このとき触媒反応は銅が受け持ち、亜鉛が酵素の安定性、立体構造の維持などに関与しているとされます。実際に8週間に渡って亜鉛のサプリメントを投与した研究において、グルタチオンやSODの増加が認められています。(※40)

※36: Short-term zinc supplementation in women with non-insulin-dependent diabetes mellitus: effects on plasma 5'- nucleotidase activities, insulin-like growth factor I concentrations, and lipoprotein oxidation rates in vitro.
Am J Clin Nutr. 1997 Sep; 66( 3): 639-42.

※37: Zinc increases the effects of essential amino acids-whey protein supplements in frail elderly. J Nutr Health Aging. 2009 Jun; 13( 6): 491-7.

※38: Effect of zinc supplementation on insulin resistance and components of the metabolic syndrome in prepubertal obese children.
Hormones (Athens). 2009 Oct-Dec; 8( 4): 279-85.

※39: Effect of zinc supplementation on markers of insulin resistance, oxidative stress, and inflammation among prepubescent children with metabolic syndrome. Metab Syndr Relat Disord. 2010 Dec; 8( 6): 505-10. doi: 10. 1089/ met. 2010. 0020. Epub 2010 Oct 28.

※40: Effect of zinc supplementation on antioxidant activity in young wrestlers.
Biol Trace Elem Res. 2010 Apr; 134( 1): 55-63. doi: 10. 1007/ s 12011-009-8457-z. Epub 2009 Jul 14.
  • 山本 義徳(やまもと よしのり)
    1969年3月25日生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。
    ◆著書
    ・体脂肪を減らして筋肉をつけるトレーニング(永岡書店)
    ・「腹」を鍛えると(辰巳出版)
    ・サプリメント百科事典(辰巳出版)
    ・かっこいいカラダ(ベースボール出版)
    など30冊以上

    ◆指導実績
    ・鹿島建設(アメフトXリーグ日本一となる)
    ・五洋建設(アメフトXリーグ昇格)
    ・ニコラス・ペタス(極真空手世界大会5位)
    ・ディーン元気(やり投げ、オリンピック日本代表)
    ・清水隆行(野球、セリーグ最多安打タイ記録)
    その他ダルビッシュ有(野球)、松坂大輔(野球)、皆川賢太郎(アルペンスキー)、CIMA(プロレス)などを指導。

  • アスリートのための最新栄養学(上)
    2017年9月9日初発行
    著者:山本 義徳


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