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カルシウムと身体機能

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掲載日:2020.06.25
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カルシウムはミネラルの中でもっとも多く体内に存在し、体重の1~2%を占めています。
そのうち99%は歯と骨に存在し、1%は血液や細胞外液にあってさまざまな生体機能を担います。カルシウムと言えばすぐに骨、とイメージされますが、カルシウムには筋収縮や神経伝達、体液のpH維持、血液凝固などさまざまな作用があります。
そのため、簡単に不足してしまわないように骨に蓄えられているのです。

カルシウムが骨や歯をつくるのは知られていますが、他の重要な働きについて紹介していきましょう。

カルシウムイオンが筋肉を収縮させる

筋肉が「収縮せよ!」という指令を脳から受けると、カルシウムイオン放出チャネルであるリアノジン受容体を介して筋小胞体からカルシウムイオンが放出されます。
そして放出されたカルシウムイオンがトロポニンに結合してトロポミオシンの立体構造が変化し、ミオシンへの結合が起こって筋肉の収縮が開始するという流れです。

そのため、カルシウムが不足していると筋力低下が起こります。極端になると筋肉が痙攣したり、テタニー(手足の痺れ、硬直)を引き起こしたりすることがあります。

カフェインを摂取すると筋力が増加しますが、この原因の一つはカフェインに筋小胞体からのカルシウムイオン放出を増やす作用があるからです。

セカンドメッセンジャーとしてのカルシウムイオン

細胞において情報を伝達するとき、伝達物質(メッセンジャー)が必要となります。このとき、脂溶性のメッセンジャーは細胞膜を通過できますが、水溶性のメッセンジャーは細胞膜を通過できません。
そのため、細胞内に情報を伝える別のメッセンジャーを合成する必要があります。これをセカンドメッセンジャーと呼びます。なおホルモンや神経伝達物質がファーストメッセンジャーとなります。

セカンドメッセンジャーにはcAMPやcGMP、NO(一酸化窒素)などがありますが、カルシウムイオンもセカンドメッセンジャーとなります。「カルモジュリン」というカルシウム結合タンパクがあり、これは炎症やアポトーシス、筋収縮、記憶、神経の成長や免疫反応など、非常に多くの代謝に関係しています。
カルシウムイオンがカルモジュリンに結合すると、カルモジュリンの構造が変化して活性化し、それによってカルモジュリンが様々な代謝を行うようになるのです。

  • 山本 義徳(やまもと よしのり)
    1969年3月25日生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。
    ◆著書
    ・体脂肪を減らして筋肉をつけるトレーニング(永岡書店)
    ・「腹」を鍛えると(辰巳出版)
    ・サプリメント百科事典(辰巳出版)
    ・かっこいいカラダ(ベースボール出版)
    など30冊以上

    ◆指導実績
    ・鹿島建設(アメフトXリーグ日本一となる)
    ・五洋建設(アメフトXリーグ昇格)
    ・ニコラス・ペタス(極真空手世界大会5位)
    ・ディーン元気(やり投げ、オリンピック日本代表)
    ・清水隆行(野球、セリーグ最多安打タイ記録)
    その他ダルビッシュ有(野球)、松坂大輔(野球)、皆川賢太郎(アルペンスキー)、CIMA(プロレス)などを指導。

  • アスリートのための最新栄養学(上)
    2017年9月9日初発行
    著者:山本 義徳


[ アスリートのための最新栄養学(上) ]