フィジーク・オンライン

塩=ナトリウム?

この記事をシェアする

0
掲載日:2020.05.14
記事画像1
「塩=ナトリウム」と思っている人は、けっこう多いのではないでしょうか。しかしそうではありません。ナトリウムは塩の一部なのです。
ナトリウム(Na)と塩素(Cl)から作られるNaClが、塩(塩化ナトリウム)になります。清涼飲料水のラベルを見ると、ナトリウムが〇〇mgと書いてある横に、食塩相当量〇gと書いてあることがあります。塩は水に溶けるとイオン化してナトリウムイオン(Na+)と塩化物イオン(Cl-)になります。

つまり溶液中では「食塩」ではないため、ナトリウムの量を表記するほうが本当は正しいのです。しかし塩分制限をしている場合など、「食塩として何グラムまで」といった制限がかかることあります。
そこでナトリウムではなく食塩としての量が分かりやすいよう、こうして表記されるようになりました。ちなみにナトリウムはmg、食塩はgで表記するという決まりになっています。

なおナトリウムの原子量は23、塩素の原子量は35.5です。これを足すと58.5。そして「58.5÷23≒2.54」ですから、ナトリウムに2.54を掛けると、塩の量になります。つまりナトリウムが1000mgだったら、それは塩分に換算して2540mgということになります。

塩と高血圧の関係は

血圧の高い人は塩分を制限する。これは半ば常識となっています。でもそれはなぜでしょう?塩分と血圧には、どのような関係があるのでしょうか?ヒトの祖先はもともと海にいて、約3億年前に陸に上がってきたと言われています。このとき、陸上でも体内の液体を海水と同じような成分で維持するシステムが必要になりました。

このシステムを、「レニン・アンジオテンシン系」と呼びます。レニンとは、腎臓から放出される酵素のことです。レニンが分泌されるとアンジオテンシンという酵素が活性化されます。すると副腎から分泌されるアルドステロンという酵素が活性化し、ナトリウムの再吸収が促されます。なおアルドステロンにはカリウムを排出する働きもあります。
陸上では海のように塩分を摂取することはできません。そのため、このようにナトリウムを効率よく吸収するシステムが出来上がったのです。

アンジオテンシノーゲン     
↓   ← レニン
アンジオテンシン 1      
↓   ← アンジオテンシン変換酵素(ACE)
アンジオテンシン 2      
↓  
アンジオテンシン 受容体      

アルドステロン と バソプレッシン(抗利尿 ホルモン)分泌、血管収縮、水とナトリウム再吸収

塩分を多く摂ると、体液が濃くなります。それを薄めるためには、体液を増やす必要があります。そのため、しょっぱいものを食べると喉が渇き、水を飲みたくなるのです。

水を飲んで体液が増えると、それだけ多くの液体を運ぶために、心臓は圧力を強める必要があります。このため、血圧が高くなるのです。またアンジオテンシンには血管を収縮させる働きがあり、これも血圧を高くする方向に働きます。

血圧の薬の代表的なものが、ACE阻害薬です。これはアンジオテンシン1がアンジオテンシン2になるのを妨げる働きを持っています。またARBという薬も近年になって出てきました。こちらはアンジオテンシン受容体の働きを邪魔するものです。
  • 山本 義徳(やまもと よしのり)
    1969年3月25日生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。
    ◆著書
    ・体脂肪を減らして筋肉をつけるトレーニング(永岡書店)
    ・「腹」を鍛えると(辰巳出版)
    ・サプリメント百科事典(辰巳出版)
    ・かっこいいカラダ(ベースボール出版)
    など30冊以上

    ◆指導実績
    ・鹿島建設(アメフトXリーグ日本一となる)
    ・五洋建設(アメフトXリーグ昇格)
    ・ニコラス・ペタス(極真空手世界大会5位)
    ・ディーン元気(やり投げ、オリンピック日本代表)
    ・清水隆行(野球、セリーグ最多安打タイ記録)
    その他ダルビッシュ有(野球)、松坂大輔(野球)、皆川賢太郎(アルペンスキー)、CIMA(プロレス)などを指導。

  • アスリートのための最新栄養学(上)
    2017年9月9日初発行
    著者:山本 義徳


[ アスリートのための最新栄養学(上) ]