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「この苦い経験を必ず来年へ活かす」本多虎之介選手 学ボ大会後インタビュー

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掲載日:2023.10.12
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各カテゴリーにおいて年々格段のレベルアップと盛り上がりを見せる日本学生ボディビル選手権。第57回となる今大会でボディビル5位に入賞した本多虎之介選手に話を伺った。

大阪学院大学からの出場は虎之介選手ただ一人

大学内に有志は何人かいますが顧問がいないため非公認のサークルとして活動しています。普段は大学内のトレーニング室を使っていて、スポーツに力を入れている大学なのでダンベルも40~50㎏まであって環境が良いです。
トレーニング室は他の部活の選手も共用で使うのですが、他の分野や競技の選手のトレーニングを見て「あれいいな」と取り入れることもあるので高い相乗効果があります。
胸のデカいラグビーの選手がデクラインプレスをやっていて、自分は肩の前部に刺激が入ってしまうのでうまく刺激を入れるコツを教わったりしました。逆に自分は腕のトレーニングを教えてお互い情報交換して仲良くなったりしました。

腕のトレーニングに関して

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すごくシンプルに、二頭ならば二頭をまとめてやって、三頭ならば三頭をまとめてやるようにしています。
二頭と三頭を交互にやるスーパーセットやドロップセットを用いる選手もいますが自分は一か所に対してまとめて刺激を入れるようにしています。

通常、理論的には高重量ならば低回数、低重量ならば高回数になるかと思うのですが自分の場合は高重量で高回数を求めています。
高重量を高回数できるならばもっと重量を上げられるだろという話にもなるのですが、ある程度の可動域を削ってでも回数を増やすようにしています。

種目によっても違うのですが、例えば二頭であればプリーチャーカールの最大収縮位付近の可動域でやったり、インクラインカールであればストレッチポジション付近の可動域でやったり。振り回す感じになりますが、うまい具合に反動も使ってやってます。
このやり方で今のところ特に怪我もありません。ただトレーニング部位のストレッチやアップは必ず行い、1セット目は軽い重量で対象部位を温めてからやるようにしています。

今シーズンを振り返って

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今年の減量期は極端にオフが少なかったと思います。オフを取らずにほぼ毎日トレーニングをやっていました。
昨年度の全日本大会では3位だったのですが、その際に審査員の方から脚と三頭筋の弱さを指摘するフィードを頂き、その改善を極端に意識しすぎました。脚を前面と後面に分けることで頻度が増え、本来はオフの日にも三頭のトレーニングをするようになってしまいました。
その結果、もちろん筋量は増えたのですが調整の時に筋に張りがなく水分も抜けきらず、カットもぼやけてステージ上での汗も目立ちました。

今大会から一ヶ月ほど前、8/13の関西学生大会からずっとそのコンディションが続いて精神的にも追い込まれていました。去年はオフの日をしっかりとれていたので体のコンディションや変化が良く分かったのですが、今回は体が疲労しきってそれらが全くつかめない状態でした。

調整期間中にも違和感が続きました。先の状況が全く読めず、自分が今どれくらいのコンディションなのかもよくわかりませんでした。唯一、絞れてくるサインとして腹筋に血管が浮いてくるのはわかったのですが、それ以外は360度霧がかかった状態でした。
今回のシーズンはすごく悔しい負け方をしてしまいましたが、そのおかげで学べたものがあるので勉強になりました。

心身の強い疲労がコンディションに反映された

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減量幅は87㎏から始めて65㎏までです。オフがなくても増量の時は良かったのですが、減量に入ると状況が一変した感じがあります。今シーズンは減量末期までなんとか重量と回数を確保できたのですが、去年の減量の時と違って極端に強い疲労感がありました。

今まで疲労が溜まった時には温泉やサウナへ行けば疲労が抜けていたのですが今回はそれらを試してもハイカーボをしてみても全く変化がなく、やっているのに変化が出せない事も強いストレスと焦りを感じる要因となりました。
トレーニング中はアドレナリンが出て何とかなったのですがその前後はやらなければいけない感がすごく強く、体と頭がリンクしていませんでした。

次にやることは明確で、絶対にオフを入れます。
疲労が溜まっているようであればしっかりと休む。一方でオフを作って休む分、トレーニングはしっかりやる。オンとオフのメリハリをしっかりつけようと思います。

今回の苦い経験からは学ぶことが本当に多くありました。
減量期は絞らなければならないプレッシャーが強く、オフを入れるのが怖かったのですが来年は減量期でも、減量期こそオフを取っていこうと思います。

運営委員として会場にいた坂本陽斗さんとも話したのですが去年よりコンディションが落ちたことを指摘されました。絞れてはいるけどドライ感がないと。やはり、疲労が溜まりすぎるとコンディションに悪影響を与えるとのことでした。

表彰式の最後に、大会を振り返って臼井さんの総評を頂いたときにも去年に比べてのコンディションの悪さを指摘して頂きました。表彰式の後に臼井さんとお話しする機会を頂いたのですが、その際も「絞れてはいたけど疲労が溜まっているのかむくんでしまっていて甘く見える」と。本当にその通りです。

自分にとっても、先日の大会のコンディションは不甲斐ないです。皆、自分よりコンディションが上回っていました。ファーストコールで5名が並んだ時、隣の選手のほうが自分より明らかにドライ感があってカットもありました。
予選審査の段階から薄々、上位には残るだろうけどどこかではじかれる感じはしていました。

ポージングの練習や生活環境

最初はバイト先のジムにいた選手からポージングを教わったのですが、入れ違いでいなくなってしまったのでそれ以降は独学で練習を続けていました。
ポージング練習は毎回トレーニング後にパンプしている状態で行っていますが、周りの会員さんの迷惑にならないよう規定ポーズだけサッと取ってなるべく早めに終えています。
年々、学生大会のポージングのレベルも大会のレベル自体も上がってきていると思いますが、自分自身のポージングの技術自体はあまり昔から変わっていないと思います。

2021年の大会で宇佐美一歩さんとお会いして、たまにトレーニングを一緒にやらせてもらったりポージングを教わったりもしました。自分が尊敬している選手でもあるので、その選手から教えてもらったことはすごく自信になります。他には須江さんが好きです。自分の得意部位は背中と肩なんですが、須江さんの背中は丸みや広がりなど本当に凄いと思います。
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今は減量食も親が作ってくれていて、作ってほしいものを作ってくれる親に感謝しています。この競技は身近な人が理解してくれるかで大きく環境が変わると思います。
食事は家族で揃って食べるわけではなく、帰る時間がバラバラなので自分の分を作り置きしてもらって本当に助かっています。だからこそ結果で恩を返したいのですが、今年はそれができなかったのが悔しいです。

競技をやっている以上は結果がすべて。結果で返すしかないと思っています。
応援自体が自分の原動力になっている側面もあるので精神的に深く追い込みすぎたりネガティブになりすぎず、来年こそ自分らしさを出して恩を返せるよう万全の状態で臨みたいです。

トレーニングの変化

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去年のオフからメニューを大きく変えて、昨年指摘頂いた脚と三頭筋の弱さを改善したくて脚を前後に分けて、三頭は週に二回、長頭と短頭に分けて行うようにしました。

背中のトレーニングが好きで週二でやっているのですが、例えばべントオーバーローをやるにしても刺激が被らないように順手と逆手で毎回分けて行っています。
ただ、大筋群ばかり週二でトレーニングしたことで疲労が抜けにくくなってしまった点が反省点です。増量期は回復が追いついていましたが、減量に入ってからは回復が追いつかずに疲労が溜まり続けてしまいました。

フォームを意識してやっていた時期もありましたが、二年ほど前からは重量を意識してフォームはその次になりました。このやり方にしてからかなり早い段階で筋量も増えて重量も一気に伸びました。種目によっては可動域が半分やそれ以下になることもありますが、自分としては良い刺激と変化が出たと思っています。
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来年以降の展望

学生大会は来年で最後になるので学生大会に絞ろうと思います。ジュニアも出たい気持ちはありますが時期によります。とりあえず間違いなく第一優先で焦点を合わせるのは学生大会です。

今大会は開催地的にも関東圏の選手が多く、関西圏の選手は少なかったです。学生大会だと皆選手同士、ライバル同士でもありますが親密な仲になりやすい気がします。情報交換も多く行われますし、大会ごとにSNSでの繋がりも多くなります。大阪に行くときには連絡するから合トレしようと言ってもらったのが嬉しかったです。

この先、トレーナーとして就職するのか一般企業に就職しながらトレーニングをするのかは決めかねています。自分はオフ期はもちろん減量末期でも楽しくトレーニングをしたいので、それを仕事にすると楽しくなくなってしまうかもしれないのがイヤで。その部分に葛藤があります。どのみちトレーニングをしっかりとできる環境には身を置きたいと考えています。

来年で最後となる学生大会、今回の経験と反省を生かしてこれまでの集大成として万全な状態で臨みますので見ていてほしいです。ぶちかますのでぜひ応援よろしくお願いします。
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追伸:本取材を取り繋いで頂いた九州学生ボディビル連盟・三松年久氏に御礼申し上げます。

取材・文:せきぐち
大会写真:塚本萌子